読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

やかんと鍋と日記と

ぐうたらと生きる。

犬のキモチ

早朝の5時から犬の散歩に出る。
これは私の意思によるものではない。

犬の意思により、私が動かされたのだ。

犬は毎朝5時に餌をもらい、散歩をしてもらっている。これを普段は母親が行っているが、今日は母親が出かけているため、私がしなければならない。

犬は時計の針くらい正確な体内時計を持っている。毎朝5時になるかならないかの所で、玄関のドアをガリガリと引っ掻き吠えることで、私たち人間を駆り立てる。まるで、『何怠けてんだ。もう朝だぞ。早く起きて飯ださんかい。』とでも、言っているかのよう。

幸いにも私は朝型の人間だから、犬に起こされることに何ら不服はない。だから、今日も『ハイハイ起きてますよ。ちょっと待ちなさいよ。』といった具合に犬をたしなめながら、餌をやる。犬はよほど空腹だったのか、餌皿に盛る途中から、すでに餌皿に顔をつっこんで食べ始めた。

餌をやった私は一度家の中へ戻り、散歩の準備をする。しかし、家に入って2、3分もしないうちに、また犬がガリガリとやり始めた。『早すぎるだろ。ウィダーインゼリーじゃないんだから。ちゃんと噛んで食べろよ。』と心の中でボヤきながら、散歩の準備を進める。

久々の散歩だったため、奮発して1時間歩きコースを選択してやった。犬もさぞかし嬉しかったことだろう。


まだ辺りが薄暗い中を、一匹の中型犬と20代半ばの男が歩く。


一時間の散歩を終え、家に帰ってくる。風呂に入ろうと湯を沸かす。『よし、朝から充実してる。』と少し悦に入りながらぼんやりしていると、玄関のドアを引っ掻く音がまた聞こえてくる。

『嘘だろ?!』シンプルにそう思った。私は今日、ヤツに極めて献身的な態度を示したはずである。責務以上のことを求めるのは、ヤツの我が儘だろう。話が違うじゃないか。とただの犬に対し一人ゴチる。

仕方なく玄関のドアを開け、犬を見にいく。すると犬は、首を傾げながらその場で直立していた。犬は私に何かを求めるとき、決まって飛びかかってくる。しかし、今はそれがない。


そうか!
母親に逢いたがってるんだ。

いつも、笑顔で玄関から出てくる母親が出てこないことに、この犬はクエスチョンを投げかけているのだ。

しかし当然、犬に母親がいないことを伝える術はなく、玄関のドアのガリガリ音はその後しばらく続いたという。