やかんと鍋と日記と

ぐうたらと生きる。

レジの女の子をアイドル化

今日の料理当番は私だ。

昨日も私が担当で、カレーを作ったのだけど、昨日一日で全てなくなってしまったので、今日も作らなくてはならない。次の日に楽してやろうと思ってのカレーだったのだけれど、カレーは食欲が増進され過ぎてよくない。

という訳で、スーパーへ寄ってから帰宅する。最近、野菜が安くなり、料理の幅が広がってきた。

一時期、私の近所のスーパーのキャベツは一玉500円になったことがある。あの時は、目玉が飛び出るかと思った。嫁にそのことを話すと、信じてもらえなかったほどである。今でもキャベツは高いが、後にも先にもあの時が最高値になると思う。






私はチンゲン菜、しめじ、もやし、玉ねぎ、豚肉を次々とカゴに放り込み、レジへ向かう。

レジには長蛇の列ができていた。
現在、時刻は午後6時。買い物のピーク時だというのに、六つあるレジが二つしか解放されていなかったため、人が溢れ出してしまっていた。その列は通路を遮るほど長くなっており、私は仕方なくその最後尾に並んだ。レジ打ちの女の子が長蛇の列に焦りを感じているのか。素早い動きで商品のバーコードをスキャンしていく。あっという間に前から3番目の位置までくることができた。

そのときだった。
隣のレジが解放されそうな雰囲気を醸し出してきた。私は隣のレジへすぐに移れるよう準備した。しかし、そのちょっと後で、2番目に待つ人のことを考えた。2番目の人を差し置いて、我先に隣のレジへ並ぶのはルール違反ではないか。そんな気がして、私はいったん様子見することに決めた。前にいる男が動くのか、動かないのか見極めてから、どうするか決めようという算段をつけたのだ。





そして、そのときがくる。





私の思惑通り、横のレジが解放された。その解放に少し遅れて、前にいる男が動いた。私は隣のレジへ入ることを諦めた。しかし、そのすぐ後に男は踏み出した右足をもといた場所に戻して、私の前に居座った。




まさかのフェイント。





そう思ってまごついた隙に、並んでもいなかったおばさんが横からスイーッと隣のレジに吸い込まれていった。






してやられた…






この二人は共謀していたのではないか、と思うほどの見事な仕事運びである。


私は怒りを収め、レジに粛々と並ぶ。






ここで、先ほど見事なフェイントで私の目を眩ませた男に目線を移そう。彼は30代前半くらいの男で、カゴに入れているのは、お菓子と酒。身なりは少し汚らしい感じであり、独身っぽさを感じさせる風貌をしている。

これといった特徴がない男なのだが、会計が済んだ後、奇妙な行動に出た。




男はレジの女の子に向かって、至近距離で手を振ったのである。



文章では、この光景の違和感をイマイチ伝えづらいが、こう言い換えればきっと分かってもらえるのではと思う。







その男の仕草と行動が、アイドルの握手会にきたガチオタにそっくりだったのだ。





個人的な意見になるが、そのレジの女の子はカワイイ。『1000円お預かりします。』など言って、客の目を真っすぐにみて微笑む様は、天使のようである。それでいて、どこか控えめで優しそうな印象を相手に与える。男なら誰でもドキッとくるような女の子なのである。

だからこの男はきっと、女の子を勝手にアイドル化しているのだろう。しかし、その子はアイドルではないし、怖いと思う気持ちが少なからず芽生えたと思う。なぜなら、側から見ている私が戦慄しているのだから。その男がエスカレートして、ストーカーにでもならなければいいが。

そして、初めからこのレジに並ぶつもりなら、余計なフェイントはやめてほしいと思う。


そんな買い物での一幕であった。